NHK時代劇「鞍馬天狗」主演の野村萬斎さん=2007年12月20日、東京・渋谷のNHK 



【週末読む、観る】◇TVクリップ◇野村萬斎
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2008.2.3 09:11
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NHK時代劇「鞍馬天狗」主演の野村萬斎さん=2007年12月20日、東京・渋谷のNHK 

 狂言の演出手法をシェークスピア劇に取り入れるなど、古典芸能と現代演劇の融合を目指す人気狂言師。舞台、映画、ドラマとジャンルを超えて挑戦を続ける彼の少年時代のヒーローは、変身ものの仮面ライダーやウルトラセブンだった。

 「鞍馬天狗(てんぐ)はおぼろげに、イカのような形のずきんをかぶった人というイメージがあった。今回やってみてつくづく思ったのは、お子さま向けヒーローもののすべての原点が鞍馬天狗だったんだということ。ずきんがヘルメットとなり、馬がバイク、剣がピストルに…」。目からうろこの発見に目を輝かせる。

 大佛次郎の代表作をNHKが37年ぶりにドラマ化、罪なき人々が傷つく幕末の世を憂いた元公家の浪人、倉田典膳(てんぜん)が、謎の人物、鞍馬天狗に変身して悪を退治するという痛快時代劇だ。戦前戦後に活躍した時代劇スター、嵐寛寿郎の当たり役として何作も映画化され、その後も東千代之介市川雷蔵らが演じた快男児の久々の“参上”に当たり、「新しいヒーロー像を作りたい」と工夫を凝らした。

 特にこだわったのは殺陣だった。強さ、重厚さが特徴だった従来の鞍馬天狗とは一変、「狂言の舞のようにひらりひらりとした超人的な殺陣。相手を成敗するときのしゃべり方も、会話調ではなく、僕が長年培ってきた抑揚を強く付けた様式美で押していきました」。21世紀のスタイリッシュな天狗像にいたくご満悦のようだ。
撮影は昨年、狂言のスケジュールを縫いながら京都で行われた。朝6時の「のぞみ」で東京をたち、9時ごろ、松竹京都映画撮影所に入った後、昼間は典膳、夜間は天狗のシーンをため撮りするという強行軍だったが、ここでも発見があったという。「天狗は夜にしか現れないから体がかなり疲れたころに衣装替えをするわけだけど、変身もののありがたさというか、2人分の体力があるような気がして、不思議とアドレナリンが出るんです(笑い)」。ちょっぴりおどけた発言の奥にプロ意識がのぞく。

 意外だったのは着慣れているはずの着物を巡る“失敗談”。狂言の世界では「襟は詰めて着る。着崩れはありえない」のに対し、浪人の典膳を撮影中は終始着崩れていなければならないからややこしい。「ふと気づくと自分で直してしまっているから、カメラが回る前にスタッフが戻しにきました」

 時代劇のメッカ、京都での撮影は初めてで、メークから刀の差し方に至るまで、プロの職人の伝統技に触れた日々は新鮮そのものだったという。古典と現代の融合の新たなる段階へ向けて英気を養う現場になった。(安藤明子)

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