<能楽>梅若玄祥と野村萬斎
能と狂言の融合
国立能楽堂4年ぶり新作
『野馬台の詩』
2010年3月6日
東京・国立能楽堂が24日(午後1時開演)
と25日(午後6時半)、
特別企画公演として
4年ぶりの新作能
「野馬台(やまたい)の詩(うた)
-吉備 大臣(きびのおとど)と阿倍仲麻呂-」
を上演する。
奈良朝期、
2人の遣唐使にまつわる
中国を舞台にした物語でシテ方観世流・
梅若玄祥、狂言方和泉流・野村 萬斎の出演・演出。
能だけでなく狂言の魅力も楽しめる舞台だ。
(富沢慶秀)
唐に渡った吉備真備が
唐の皇帝から出される難問を、
阿倍仲麻呂の霊に助けられて
次々とクリアする話が
平安末期の傑作絵巻
「吉備大臣入唐絵巻(にっとうえまき)」
に描かれている。
かつて能にも作られたが、
いまでは廃曲となり上演されない。
能楽研究者・
小田幸子脚本で、
能・狂言両方の言葉と技法で再創造。
ピンチを乗り越える
爽快(そうかい)な冒険、
異国で鬼と化した悲哀、
二人の遣唐使の「生と死」
「公と私」など、
さまざまな対立項から描き出す試み。
先ごろ試演会が国立能楽堂で開かれた。
入唐した真備(野村)はそのまま食物も
与えられず高楼に幽閉される。
すでに餓死したと思われた
ところに現れた鬼は、
日本に帰国できず唐で没した仲麻呂(梅若)。
中国の古い詩文集「文選(もんぜん)」の読解、
囲碁、宝誌和尚(ほうしおしょう)
作の予言書と伝えられる
「野馬台詩(やまたいし)」の謎解き。
仲麻呂の教えで、
真備はどう切り抜けたか。
二人の結末は…。
スリリングな展開も。
高楼の窓が開き、
ひょっこり顔を見せる真備。
「狂言『髭櫓(ひげやぐら)』
の手法をちょっと借りて」と野村。
二人が空を飛ぶシーン。
「能だから歌 舞伎のような
宙乗りの必要はないが、
ちょっと体重を落とさなければ…」と、
このところ体重を気にしている
梅若は余裕の笑いを誘う。
「能と狂言の新しい出合いで
面白いものを創(つく)りだしたい」と、
二人は口をそろえる。
チケットは売り切れたが、
当日キャンセル券の出る可能性がある。